漢字直接入力「息吹」

文字を1文字辺り平均何打鍵で打てるかは、その文字の情報量から求めることが出来る。情報量のbit数を求めて、基数を使うキーの数に置き換えれば良い。これは、最初からその基数で情報量を求めるのと等しいので、その方法で情報量を求めると、次の通りになる。サンプルは前回のものと同様とする。

キーの数 bit数
2        7.91   :情報量
52       1.39   :標準的な日本語入力に必要なキーの数
36       1.52   :「息吹」が用いるキーの数

今回のサンプルは全角文字だけなので、標準的な入力方法は、メイン48キーとスペース、エンター、シフト、カナ変換キーで考えてみた。すると、配列を気にしなければ、平均1.39打鍵で入力できるはずなのである。


一方、ローマ字入力では、変換を気にしない場合、大体2.2〜2.3打鍵である*1。全て自動変換できたとしても、符号化効率は0.56程度と低い。


入力効率を上げるには、文字ごとの連鎖を考慮する、つまり、複数の文字を入力できる対応を行うことが考えられる。AZIKのような、複数のかなを入力する対応や、予測変換などがある。これを導入した場合、圧縮をかけたのと同程度の効率化が期待できる*2。そのような符号化は人間には扱いきれないので、そこまでの期待は出来ないものの、単純な符号化以上の効率を期待することも可能である。


もう一つの方法は、配列をより効率の良いものにすることである。それを目指したのが、前の「はぶき」や、今回の「息吹」である。息吹では、メインの30キーと、スペースやカナ切り替えなどの6キー、合わせて36キーを用いる。この場合の理想打鍵数は1.52打鍵である。


息吹の実際の打鍵数を数えると、例えば、漢直ノート 「音」と交ぜ書き変換などで比較をされているので、その文章を使うと337打鍵となる。全体で190字であるので、平均打鍵数は1.77になる。符号化効率は0.86程度で、ローマ字入力と比べて改善されていることがわかる。


息吹の場合、配列を新しく覚えなければならないが、一度覚えてしまえば、予測変換のような、結果を確認しなければならない方式より速く入力できるようになるはずである。入力のしやすさは、漢直という方式と、使うキーの縮小で確保したので、配列に関しては覚え易さを重視している。

息吹

名前は前作の「はぶき」、JIS配列を基にしたり、盤面の移動に関するアイディアを参考にした百相鍵盤『き』、(まだ実装していないが)変換方式を参考にした「風」をイメージ出来るものとして考えた。例によってxyzzy上での実装のため、netinstallerからDLして欲しい。



こんな感じで盤面が表示されるので、適当に打ってみるとどんなものか分かると思う。まだ必要最低限の機能しかなく(特に習得アシスト機能がないので)、使い物にならないかも知れないが、雰囲気を感じてもらえればうれしい。

*1:打鍵数と入力速度比較

*2:サンプルを7zしたところ、1文字当たり5.36bitになった。基数が52の場合は0.94となる。