時間を逆行する。

ニュートン力学では、時間的な可逆性があるので、どんなに複雑な系でも時間を逆行できる。
例えば、重力は0であるとして、箱の真ん中に爆発する瞬間の爆弾があるとする。
この時点を初期状態として時間を進めると、破片が飛び散ってでたらめな方向へ飛ぶ。しばらくの間エントロピーが増大して、そのうち、箱の中で均等になるように飛び回るようになる。
こうなったら、あとは時間が進んでも面白くない。エントロピーはこれ以上増えない。
それでは、時間を巻き戻そう。全ての破片の動きを反転させれば、時間を巻き戻したことになる。
破片は今まで通ってきた軌道を完全に逆行し、他の破片との衝突も同様に起こる。
しばらく同じようにでたらめに飛び回っているように見えるが、あるとき突然真ん中に集まる。
そして、もとの形に戻ってしまう。初期状態まで戻ってきたわけだ。
このあと、時間をさらに戻す、この動きを続けると面白いことが起こる。爆発物が速度をもって衝突するのだから、やはり爆発する。
破片は飛び散り、その後次第に箱の中で均等になる……。正の時間と同じ結果になる。エントロピーは増大してしまうのだ。


量子力学では、エントロピーは常に増大する。破片の軌道は、確率的に変化してしまうので、逆の動きをさせようとしても上手く行かない。
時間が経つにつれ軌道のずれは大きくなり、元の状態には戻らない。


これをシミュレーションで見てみると理解しやすいいんだろうけど、計算に丸めが入ると上手く戻ってくれないんだよね。
でも、シューティングゲームのリプレイを考えてみるといいかも。


自機はともかく、弾の軌道まで保存するとデータ量が多くなる。そこで、弾の軌道は計算で求める。
この、弾の軌道にランダムな要素がなければ、リプレイは完全に再現できる。
しかし、ランダムな要素が入ってしまうと、軌道が変わってしまう。当たらないはずの弾が当たってしまって、リプレイが途中で終了してしまったりする。


確率的な要素を含む系では、シミュレーションによって現象を再現、逆行することは不可能なのだ。結果を全て記録していない限りね。